20131021学徒出陣の壮行会から70年 慰霊碑前で“最後の”追悼会

20131021学徒出陣の壮行会から70年 慰霊碑前で“最後の”追悼会

井上 br 「ご覧いただいているのは、学徒出陣の慰霊碑です。 br 建てられているのは、東京の国立競技場の一角。 br 学徒出陣の壮行会は、この場所で行われたのです。」 br br br 大越 br 「国立競技場といいますと、2020年の東京オリンピックの開催に向けて、建て替えが決まっていまして、この慰霊碑も来年(2014年)の夏に、いったん撤去されます。 br 学徒出陣の壮行会が行われて、今日(21日)で、ちょうど70年。 br 元学徒兵たちは、この場所での追悼会は今回で最後になるかもしれないという思いを胸に、慰霊碑のもとに集いました。」 br br 壮行会から70年 “最後の”追悼会 br br 今日、東京・国立競技場で開かれた追悼会。 br 元学徒たちを中心に、およそ100人が集まりました。 br br br br br 「黙とう。」 br br br br br br この場所で、元学徒たちのよりどころとなってきたのが、慰霊碑。 br しかし、この慰霊碑が2020年のオリンピック開催に伴い、来年・夏に、いったん撤去されることになったのです。 br 元学徒たちは…。 br br br br 元学徒 br 「戦争があってはいけないということを続ける意味での碑。」 br br br br br 元学徒 br 「ここから巣立っていった人たちの思いが碑に込められているので、ぜひ壊さないで。」 br br br br br 慰霊碑が作られたのは、今から20年前。 br 元学徒たち有志が、寄付を募って建立しました。 br 以来、元学徒たちは、競技場で壮行会が行われた10月に、毎年集って、亡くなった仲間たちを悼んできました。 br そして、今日の追悼会。 br あいさつを行ったのは、1人の女性でした。 br 渡邊米子さん、88歳。 br 70年前の今日、学徒出陣の壮行会に参加し、スタンドで学徒を見送りました。 br br 渡邊米子さん br 「その日は曇っていて、雨が降って、とても冷たい、暗い日だった。」 br br br br br 当時、女子学生だった渡邊さん。 br 学校から、壮行会に参加するように命じられたといいます。 br 国を挙げて、学徒たちの士気を高めるためでした。 br br br br 渡邊米子さん br 「この辺にいたと思う。 br あそこから出てきて、ここに出てきて、並んだ。 br 寒い日で、かわいそうだなと思った。 br どんなに冷たかろうと思って。」 br br 元学徒や見送った女子学生たちにとって、この国立競技場に慰霊碑があることが、学徒出陣の証しなのです。 br br br 核心:学徒出陣の証し この地に br 壮行会をスタンドから その時 学徒たちは br br 東京都内に住む、渡邊さん。 br 壮行会の様子を今も鮮明に記憶しています。 br br 渡邊米子さん br 「覚えてます。」 br br 行進する学生たちを見るうちに、不安が増していったといいます。 br br br br 渡邊米子さん br 「帝大、商大あたりは本物の銃だったと思うけど、『あれ?』って気がついたら、木銃だった。 br だからびっくりしましたね、こんなに物資が足りないのかって。 br やっぱり暗い気持ちでしたね、この先どうなるのかと思って。 br いい印象ない。 br この人たち、何%無事に帰ってくるかって話し合っていた。」 br 学徒だった夫 壮絶な戦争体験 br br 渡邊さんが結婚したのは、終戦後の昭和23年。 br 夫の貞和さんは、壮行会のあの日、渡邊さんが見送った学徒の1人でした。 br br 渡邊米子さん br 「『いたの?』なんて、あとで笑い話になった。 br 『寒かったでしょう』って言ったら、『寒かったね』なんて言って。」 br br 東京商科大学の学生だった貞和さんが徴兵されたのは、昭和18年の12月。 br 海軍の予備学生として入隊しました。 br 当時の政府は、学生を動員することで、戦況悪化による兵力の消耗を補おうとしたのです。 br 貞和さんは、特攻隊員に…。 br 出撃を待つ日々が続き、仲間たちは、次々に命を落としていきました。 br 貞和さんも、終戦があと1週間遅ければ、出撃していたといいます。 br br 渡邊米子さん br 「ぽつりぽつり、みんな送り出すと帰ってこない。 br 仲間の人たちに、自分たちが生き残って申し訳なかったっていう気持ち強かった。」 br br 貞和さんは7年前に、がんで亡くなるまで、毎年、国立競技場の慰霊碑の前で行われる追悼会に、欠かさず参加してきました。 br 夫にとって、学徒出陣を忘れないための象徴が、慰霊碑だったのです。 br 学徒出陣の証し 慰霊碑への思い br br 慰霊碑の建立を、夫の貞和さんと共に行った、元学徒の阿山剛男さんです。 br 阿山さんが入隊したのは、早稲田大学2年生の時。 br 貞和さんとは同期で、共に特攻隊員となりました。 br br br br 元学徒 阿山剛男さん br 「いまだに忘れ得ないのは、指名され、先に行って、沖縄の海で散華した仲間たち。 br いまだに沖縄の海の底に沈んでいる。 br 下手すれば、自分がそうだった。」 br br 阿山さんたちは、慰霊碑を建立する際、かつて学徒出陣の壮行会が行われた国立競技場に建てたい、と強く希望したのです。 br br 元学徒 阿山剛男さん br 「あそこで行進したでしょ。 br 日本の国は大きな戦争やった。 br その時に、若者が学業途中で、国のために死んでいった歴史的事実。 br できるだけ長く、歴史の上にとどめておきたい。」 br 学徒出陣の慰霊碑 残していきたい br br 学徒出陣の証しとなってきた、国立競技場前の慰霊碑。 br 阿山さんや渡邊さんたちは、いったん撤去されても、再び、この場所に慰霊碑が戻ってくることを願っています。 br br br br 元学徒 阿山剛男さん br 「何万人という仲間が、ここで行進して送られた思い出の地。 br ここを出てから、みんな兵隊行っちゃった。 br いわば学生としては、最後の地。」 br br br 渡邊米子さん br 「戦争の犠牲になった人たち、皆さんのものだから。 br この位置に、動かさないで置いていただきたい。」 br 実態不明の学徒出陣 後世に伝えていくには br br 大越 br 「戦争の記憶をとどめる施設の中には、時代の流れの中で失われていくものが少なくありません。 br だからこそ、なすがままにするのではなくて、“何らかの手段で、あえて残す”という意志と決断が、ますます必要になってきているように思います。 br それは、戦争を知らない世代に引き継がれる責任と言ってもいいかもしれません。」


User: Ryosuke Nakayama

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Uploaded: 2013-12-07

Duration: 09:55