幕末の志士に大きな影響を与えた思想家の吉田松陰が、処刑される前に書いた辞世の歌が新たに１通、見つかったと京都市の美術館が発表しました。 br 吉田松陰は、高杉晋作や伊藤博文など、多くの幕末の志士を育てた思想家です。 br 「安政の大獄」で２９歳の若さで処刑される直前、「此程（このほど）に思（おもい）定めし出立（いでたち）はけふ（きょう）きく古曽（こそ）嬉（うれ）しかりける」と、死の覚悟を詠んだ辞世の歌を残しています。 br これまで、家族に宛てた１通が見つかっていましたが、京都市東山区の井伊美術館が、同じ歌が書かれたもう１通が見つかったと発表しました。 br 井伊美術館の井伊達夫館長が、競売に出されていた巻物に同じ歌を書いた紙が貼られているのを見つけ、複数の専門家が調べた結果、直筆とみられることが分かったということです。 br この巻物は、安政の大獄を行った井伊直弼の家臣、長野主膳の手紙を集めたもので、歌の裏には、松陰の辞世の歌であると主膳が書いたとみられる文字も残されているということです。 br 辞世の歌を複数の紙に書くことは珍しくないということで、井伊館長は、「政敵だった主膳も松陰の資質を認めていたからこそ残したのではないか」と話しています。