作品の概容br 　何不自由なく暮らし、平凡な毎日に満足し、社会の問題に口を出さず、br 日々の生活を快適に過ごす大学生・諭。br 　その兄・修は情熱的な恋愛を経て年上の幸子と一年余前に結婚したが、br 何度となく諍いをしては諭のアパートに転がり込んでいる。　ある日諭br は、やっとのことで修を幸子のもとに送り返し、久しぶりに大学に顔をbr 出した。すると、話題の中心は家出生活続行中の寛之。友人のアパートbr を転々とした揚げ句、もう行くところがないと言う寛之を、諭は体よくbr 友人たちに押し付けられてしまう。br 　渋々寛之を連れ帰ってみれば、いなくなったはずの修が居座っていた。br そして二人にうんざりしていたところに、今度は女友達の直美が押しかbr けてくる。どうにも家に帰りたくないわけがありそうだ。それはたやすbr く叶うはずだったささやかな夢。こうして狭い二間のアパートで四人のbr 共同生活が始まった。　初めこそ迷惑そうにしていたものの、破れかけbr た夢を語る三人を、諭は新鮮な気持ちで眺めるようになる。妥協を重ね、br 高い目標をもたず、中ぐらいの幸福で満足してきたのが諭のこれまでのbr 人生だった。br 　そんな頃、幸子が修を迎えに来た。が、幸子はこの不可解な共同生活br に露骨に違和感を示す。現実的な常職人との間にある大きな溝。　しかbr し幸子の妊娠を知った修は、そこに未来を見出し、幸子のもとへ帰ってbr 行く。br 　結婚や家庭について語り合う中で、直美は自己矛盾に動揺し、自分をbr 足元から築き直すことを決意して共同生活に終わりを告げる。　寛之も、br 現実を受け入れずに甘えていた自分に気づいていた。今出て行かなけれbr ば、このままだらしなく居つくだけだ……、名残をとどめて寛之は去っbr て行く、約一ヵ月だった。諭もこの間に変わっていた。すばらしくてはbr かないものを知ってしまった。現実の痛みと刹那的な思い出が、それぞbr れの胸に残る。